2010年02月14日

横浜港を救おう!

今とっても気になっていることベスト5に入ること。それは横浜港についてです。
横浜は歴史的にも日本の代表的な港です。豪華客船が寄港したり、湾内クルーズ船が運行したりと、普通の人がイメージする港らしい光景が見られます。また、観光地としても常に人気のある赤レンガ倉庫、大桟橋や山下公園、港の見える丘公園、またみなとみらい地区など、港にふれることのできるスポットがにぎわっています。

このように一見活気のあるように見える横浜港ですが、実際には港としては世界の中で埋もれていこうとしています。港が存続していくためには、どれだけクルーズを走らせても、豪華客船を寄港させてもだめで、本来的には貨物運輸の拠点として、特に海外との貨物運輸のハブとして活用されることが必要です。それが今、危機的な状況に直面しています。

私は、港湾や海上運輸に関してはまったくの素人ですから、的外れや誤ったことを書くかもしれませんが、少なくとも今の時点で一般の素人が感じる危機感みたいなものをお伝えできればと思います。また専門の方のご指摘をもらえれば、うれしいです。

もともと小樽生まれで、港町横浜に引き寄せられるように2年前に横浜に移住。最初は港周辺の賑わいをみて、やっぱり活気があると思っていました。でも、貨物の施設の方を見に行った時に、2つのことが気になりました。日本でも代表的な港である横浜にしては(1)接岸している船の数が多くはないなということ、そして、(2)接岸している船が思っていたよりずっと小さかったこと。(1)についてはたとえばピークが夜であったりとかで、まったくの勘違いかもしれませんが、(2)については、日本有数の港だから、さぞ大きな貨物船が見られるかと思っていたことからも、とっても気になりました。もしかしたら、あまり利用されてないのかなと。

横浜市立中央図書館に行ったときに、たまたま港湾関係の本をみつけて、いくつか手にとって読んでみました。その中で今まで知らなかったことがとてもわかり安く書いてあった本がこちらです。

知ってもらいたい日本の港 、国分 和雄 (著) (アマゾンでは新刊・中古とも取り扱いなしです)

その本で読んだことと、自分でその後ネットでウェブサイトや資料を読みあさって、日本の港が実は危機的な状況にあるということでした。もちろん、関係者の方々が懸命に努力をしながら、なんとか盛り立てていこうとしていますが、なかなか他の人の理解が進まないこともあって、 思うようにいかないという状況のようです。

さて、素人なりにできるだけ分かりやすく書きます。

日本が資源のほとんどを海外からの輸入に頼っていることは誰もが知っています。自給率はほんのわずかで、輸入が止まったら今の生活が維持できないどころか、経済活動がおそらくストップします。また、輸出も重要な産業ですから海外への輸送も重要です。飛行機か船で運ばない限り、物は入ってきません。飛行機は輸送費も運べる量も、船に比べると非効率です。船は日本にとって今でも、輸出入の主役なのです。

さて、飛行機がジャンボジェットより大きい超大型の2階建て飛行機 A380の時代がこようとしているのと同じように、貨物もオーバーパナマックス型という大型のコンテナ船が海外輸送の主流になっています。コンテナとは、いろんな形や大きさの荷物をばらばらに積み込むのではなく、定型のコンテナに入れることで積み込みが楽で、しかも倉庫がなくてもそのまま積み重ねて保管ができる入れ物です。このコンテナをこれまで以上に大量に輸送することのできるのが、オーバーパナマックス型のコンテナ船です。

こうしたコンテナ船の航路として日本に関係があるのが、(1)太平洋を経由してアジアと北米を結ぶ北米航路、(2)マラッカ・シンガポール海峡、スエズ運河、地中海を経由してアジアとヨーロッパ間を結ぶ欧州航路です。

大型コンテナ船が接岸するためには、当然水深の面でも、埠頭の長さも規模が必要だということは感覚的に分かると思います。具体的にいうと、岸壁が350メートル以上、水深で15メートル以上の深さが必要になります。こうした埠頭を大水深バースといいます。現時点では、横浜には専用の大水深バースが2つ供用されています。2つはすごいと思わないでくださいね。アジアの他の国と比べて見ると:

中国 28(計画 112)
韓国 15(計画 48)
シンガポール 16(計画 17)
韓国 15(計画 48)
日本 4(整備中 5 計画 6)

数字は実際に供用されている数と括弧内が計画中のものです。中国で計画中が112というのはものすごい数ですが、国土交通省が平成21年4月現在で調べた統計からの引用なので間違いはないと思います。韓国の 48もかなりの数です。シンガポールも負けてはいません。それに比べて日本は整備中のものと計画中をすべてあわせて、ようやく15です。つまりアジアの主要な港を抱える国の今のレベルにようやく追いつくという状況です。

このように書くと、貨物の取り扱い量が実際には減っていて、大型貨物も思ったほど入ってきていない現実があるからこれ以上は過剰投資だというように声高な叫びも聞こえてきます。でも、ちょっと考えてみると、実は認識がまったく逆で、取扱量や大型船の数が少ないのは、それに対応できるハードが整っていないからということではないかと思います。また、ソフト的な問題もあります。日本の港が人件費が他の国よりはるかに高いということ、また、税関の手続が、縦割り行政の弊害で2.7日もかかってしまうことです。ある資料では、税関の手続のために、書類をもってあちこち走り回らなければならないそうです。アジアの主要国の港では窓口が一本化され、電子化も進んでいるため、24時間以内にはすべて終了します。

大型船が入れないとなぜいけないのか。別に小型のコンテナが運んでくるようにすればいいじゃないかという声もありますが、先ほどのコンテナ船の主要航路を思い出してください。ヨーロッパからの航路は途中にシンガポールや香港があります。北米航路は途中で日本を通ります。大型コンテナが日本に直接入って来れないとどういうことが起こるか。

ヨーロッパからの航路は、シンガポールや中国の港で日本向けの荷物を降ろし、そこから小さな船に積み替えて日本まで運ぶことになります。また、北米航路は日本を素通りして香港などに行き、同じように、小さな船に積み替えて日本へ運ぶ。当然、積み替えと日本への小型コンテナの輸送費が余計にかかってしまいます。

輸出の場合は直接日本から欧米へ船をだせばいいということになりそうですが、船一杯に大量に輸出するなら別ですが、少量の場合は他の船で一緒に運ぶことになりますから、やはりアジアの港に一度運んでということが必要になってしまいます。

もし大型コンテナがどんどん日本に寄港していけるインフラが整っていれば、直接積み込みができます。また、アジアとの輸出入も定期航路をつかうことでコストを減らすことができます。

もっと大切なことは、空港もそうですが、ハブ化という問題です。世界の物流が行き交う中心の港になれば、それだけ経済活動の鍵を握れます。中国や韓国、シンガポールがねらっているのはまさにこのハブ化です。日本がハブ化ができないと、経済の中心がそうしたアジアの国に移ってしまいます。

街もそうですが、多くの人や物が行き交うところは、あらゆる面で活気があります。ハブ化ということを甘く見ていると、人や物が日本を素通りしてしまい、一方通行の流れしかない活気のない場所になってしまいかねません。

事業仕分けが注目を浴びている中で、目先のことだけをみて、お金がかかることはなんでも悪という風潮が出てきているような気がしています。でも、一見莫大なお金がかかることでも大切なことには工夫をして投資をする必要があると思います。ほとんどの物が船で運ばれてくる日本。その輸送をサポートする港は、とても重要なインフラだと思います。

もう一言だけ付け加えると、海外だけでなく国内の輸送も、船を使うと量もコスト面でも、また環境面でもいいことがたくさんあります。

横浜に住んでいたり、関わりがある人は、船や港のもつ役割や現状をもういちどしっかりと考え直すことが、ぜひとも必要です。





同じカテゴリー(総合)の記事
 Twitter活用事例1000オフイベント開催決定! (2010-03-04 00:30)
 完璧じゃなくてもいいんじゃない? (2010-03-03 21:34)
 絶対オススメ〜Twitter活用事例1000〜 (2010-02-25 21:50)
 New York Timesに見るトヨタのリコール問題 (2010-02-07 03:54)
 たとえ小さなことであっても (2010-01-30 00:20)
 日本の男はなぜエスコートができないか! (2010-01-27 03:16)

Posted by 英会話ナチュラ・リングア横浜 at 12:27 │総合